3・噂

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3・噂

 「あとで聞きたいことがあるから」  美岬は真顔でそう言うと、さっさと自分の席についてしまった。  いつもだったらチャイムが鳴っても話が尽きなくてぎりぎりまで話しているのに。  何か怒らせるようなことしたかなと思い返しても心あたりがない。  6月2週目の月曜日。  昨日、天気予報で梅雨入りと言っていたけれど、早速、それを裏切るような快晴だった。  どうしたんだろうと頭をひねっていると、クラスの女子がひとり、息を弾ませて教室に飛びこんできた。  「聞いて! 1時間目のデッサンの授業、秋庭先生が出張で、代行が沢渡先生だって!」  とたんに、教室にいた女子たちが色めき立った。  「よかったあー。昨日バイトで遅かったから、さぼろうかと思ってたんだけど、来てよかった!」  クラスの女子たちの浮かれぶりとは裏腹に夏瑛は戸惑っていた。  もしかしたら、靭也の授業を受けることがあるかもとは思っていたが、こんなに早くその機会が訪れるとは思っていなかった。
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