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「ちょっと来て」
休憩時間になるとすぐ、美岬にロビーまで連れていかれた。
「何かあたしに隠していることない?」
「えっ?」
美岬は周囲に人がいないのを確かめてから、小声で言った。
「あのさ、見かけたんだよね。昨日、夏瑛と靭先生が一緒にいるところ。
夜8時頃かな。別館からふたりで出てきたでしょう。こんなに遅くまで、どうしたんだろうって思ったよ。
ふたりともぜんぜん違う雰囲気だったし。
ふだん、あんまり表情を変えない靭先生が、夏瑛を見つめて微笑んでるし」
美岬は夏瑛の目を覗きこんで、言った。
「もしかして……付きあってたりする? 靭先生と」
どうしよう……もう、気づかれちゃうなんて。
でも、勘のいい美岬を、これから先、ずっとごまかしきれる自信はなかった。
「うん、実は……」
「えっ。本当にそうなの? 半信半疑だったんだけど。近年、稀にみるサプライズ。
でもさ、水くさいよ、あたしにまで黙っているなんて。付きあっている人いないって言ってたじゃない」
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