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美岬はまだふくれっ面のまま言った。
それで怒っていたのか。
「ごめん。でも、なかなか話すきっかけがなくて」
「気をつけなきゃだめだよ。あたしだったからよかったけど、靭先生ファンの子だったら、今ごろ大騒ぎになってたよ」
「うん」
返す言葉もない。
「でもまあ、結果的によかったんじゃない?
あたしに打ち明けることになって。
安心していいよ。口固いのには自信があるから。困ったことがあったら、いつでも相談してよ、ね」
そう言って、やっといつもの笑顔を見せてくれた。
やっぱり、美岬は頼りになる。
ずっとひとりで背負っていた重荷が、ほんの少し軽くなった気がした。
***
「しっかし、ふたりともポーカー・フェイスだねぇ。目くばせでもするのかと思ってずっと観察してたけど、まったく知らないふりなんだから」
ようやく2時間目も終わり、昼ごはんを食べに学食に向かう途中で美岬が耳打ちしてきた。
「そりゃ、そうだよ。もう、いらない神経使って、疲れはてたよ」
「ねえ、さっきの続き、話してよ。聞きたいこといろいろあるんだから」
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