3・噂

7/9
前へ
/90ページ
次へ
「やっぱ、そう思う? でも、どうしても沢渡先生のことしか目に入らなくて」  美岬はちょっと呆れた顔をした。 「なにそれ。たんなるノロケだよ。まあ、でも、たしかにカッコイイもんねえ。気持ち、わからないでもないけど」 「もちろん、外見に惹かれたところもあったけど、それだけってわけじゃなかったんだよ」 「それじゃあ、好きになったきっかけは?」 「もう、芸能人へのインタヴューじゃないんだから」  と文句を言いつつ、これまで誰にも打ち明けられなかったこともあって、次から次へと話が溢れだしてきて止まらなくなってしまった。  結局、その後、美岬の家に押しかけて、夜通し〝恋話〟に花を咲かせた。  美岬は茶化しながらも、いろいろアドバイスしてくれたり、自分の恋愛遍歴(これもいろいろありすぎてびっくりの連続)を語ってくれて、距離が一挙に縮まった。   ここまで心の開ける友だちができたのは生まれてはじめてだった。  胸の内に抱えるしかなかった思いを友だちと分かち合えるのが、こんなに楽しいとは知らなかった。  
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

319人が本棚に入れています
本棚に追加