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どこにいても靭也は注目の的だった。
ふたりで街を歩いていても、すれ違いざまに視線を感じることがある。
靭也への称賛と自分への羨望(せんぼう)のこもった眼差しを。
学校でも靭也が会えるのは嬉しかったが、正直、少し困ったことになったとも思う。
ふたりの関係をまわりに知られないようにしなければ。
でも、そんなことできるのだろうか。
ただでさえ靭也には注目が集まってしまうのに。
5年間、延々と片思いしていた9歳年上の靭也に想いが通じたのは高2の冬。
靭也が出品していた公募展の会場でお互いの気持ちを確かめあった。
その日の午後に降りだした雪はやむことなく、東京の景色を白一色に染めた。
降りしきる雪の中、美術館から叔父の家に出向いた。
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