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靭也が緊張した面持ちで、夏瑛と真剣な気持ちで付きあいたい、と告げた。
叔父はいつになく気難しい顔をしている。
話を一通り聞いたあと
「わかった。君のことはもちろん、信頼している。が、なんといっても夏瑛はまだ高校生だ。万が一夏瑛を泣かせるようなことをしたら、そのときは君とは一切縁を切るよ。僕にとって、夏瑛はそのぐらい大事な姪なんだ。肝に銘じておいてくれ」
「はい。承知しています」
そう言うと、靭也も叔父と同じぐらい真剣な顔になり、ふたりはじっと見つめあった。
先に表情を和らげたのは叔父のほうだった。
「これが花嫁の父の心境ってやつか。いやいや、世の父親たちの気持ちが初めてわかったよ。それに、僕もそうそう厳しいことは言えないな。貴子と付き合いだしたのは彼女が19歳の時だったし」
ふーっと一息つくと、叔父は立ちあがり
「おーい。お茶まだかい? 喉がからからだよー」と台所にいる貴子に声をかけた。
もうすっかりいつもの叔父に戻っている。
靭也は隣に座っていた夏瑛を見て微笑み、その左手をぎゅっと握った。
汗をかいている。
だいぶ緊張していたみたいだ。
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