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表に出ると、もう雪が10センチほど積もっていた。
「うわ、スキーで滑れそうだな」
「どこもかしこも雪だらけだね……すごい」
叔父の家の前の坂道はニュースで見る雪国のようで、滑らずに歩けるか心配になるほどだった。
きっと明日のテレビでアナウンサーやキャスターが「数十年ぶりの積雪」と大騒ぎするのだろう。
まだやわらかな雪を踏みしめる音と、ときおり枝の上に積もった固まりがどさっと落ちる音がするだけで、あとはすべて雪に吸収されてしまったように静かだ。
「こっちにおいで」
話しづらいからと、靭也が自分の傘を差しだし、夏瑛をその下に導いた。
あいた手で夏瑛の肩をそっと包む。
(今、靭にいちゃんに肩を抱かれてるんだ……)
長い間、こんな日が訪れることを夢見てきた。
でも、いざ現実になると実感がわいてこないのが不思議だ。
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