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プロローグ
遠くでバイクが走り去る音がする。
部屋はひんやりとした空気に満ちていた。
まだ薄暗い。明け初めの淡い光が窓を青白く染めている。
見覚えのない場所。けれど寝ぼけた頭には、ここがどこだかわからない。
腕にしびれを感じて寝返りを打つ。
「おはよう……」
声がして、びくっとする。寝起きで少しかすれている。
えっ、と驚いているうちにしなやかな腕が伸びてきて、絡めとられる。
肌が直接触れ合い、そこから身体中に熱が広がっていく。
額に頬に唇にキスの雨が降ってくる。
奔流となった記憶が脳内を駆け巡る。
そうだ、夕べは……
自分が一糸まとわぬ姿でいることに気づき、あわてて足元のブランケットを探った。
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