薫の回想

1/3
前へ
/12ページ
次へ

薫の回想

金星のハーブをもってしても女の考えることは全くわからん。魔術とは現実的努力があって初めて効力を発する。だが現実的努力といえど果たして何をすればいいのやらが全くわからん案件にぶち当たった。 「ヒメミコのまほうやさん」開店三日前にななえが突然俺に別れを切り出し、店にももう顔を出さないらしい。一体俺がどうしたというのか?その時の一連のやりとりはこうだ。 「薫くんは私が魔女だから付き合ってるんよね?」 「いや、別にきっかけはそうやけどきっかけにすぎひんから…」 「自分の知識の探究のためやんな?」 「うーん、まあ」 「そりゃまあ私は半人前の魔女だけど…にしても、いっつも自分の話ばっかり!私が話そうとしたら遮ってくるし」 「聞いてるつもりやけど。ごめん、気つけるわ」 「今、つもりって言ったよね?やっぱり断定できてへんやん。9:1ぐらいで自分の話ばっかして、人のことは全く気にもかけない!もう嫌、関わってこないで。先生のお店にももう顔出せない」 考え方が極端すぎると思うが、女ならこの程度のヒステリーはよくあることなんだろうか。頼れる友人たちに聞いてみた。 「薫ほど面白くてウィットに富んだ男を俺は知らんな。ええんちゃう、これからは優しいだけのつまらん男と連んどいたら」 喜助は吐き捨てるように言った。いつも無害そうな喜助がここまで他人を糾弾するのは意外だった。 「あんたが結城くんを庇いたいのはわかったよ。でもななたんがそう思ったんなら、しゃーないでしょ」 俺も吉方と同感だ。ななえはたぶん最善の選択をしただけ。 「や、俺は薫の事を悪く言われたことが腹立つねん」 「喜助、もうええよ。俺嫌われるんは慣れてるし」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加