金星のハーブ

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後日この事を喜助に話してみた。 「そらその言い方はアカンで。店の世界観云々もあるやろうけど、桃園さんとしてはやっぱり薫にかわいいって思ってほしかったんちゃうかな。」 「ふうん…そういうもんかぁ。俺はいつも通りが一番ええと思うけど」 閉店後の締め作業中、先生と2人になれたからまたその事を相談した。いつも先生を占領している女子2人が着替えていたので今しかないと思った。 「っていう事があったんですけど、俺の思考回路にはどっか欠落があるんですかね。」 「病院へ行けば何かしらの名前を付けてくれるだろう…って慰めてくれるとでも思ったか? 否、男と女は所詮は分かり合えないものだよ。多少例外はあるだろうが、基本的にはね。性質が違うから。」 先生は人間の本質を見透かすような発言が多々ある。子どもの姿をしていながら正体は何?俺達も勉強すればああなれるのか? 「陰陽思想的な話ですか?」 「ああ。只な、それだからこそ手を取り合って共存していくのさ。ずっと昼とかずっと夜は嫌だろ。 結果として理解し難いなら仕方がない。だがお互い分かり合う努力はしような。 そうしたらお前は成長しすぎた体に見合った大きな心を持ち、ななえも足りない体を補う賢さを持つだろう。」 結びは古事記ですか。 そして先生に店の商品の金星ミックスハーブを頂いた。まるで俺には情がないと遠回しに言われているようだ。 確かに他人がどう思っているかなんて今まで考えたことがないし、それで実際人に迷惑をかけるほど色々な人間と関わったこともない。具体的な対策は思いつかないから後回しとして、これではいけないという事だけは分かった。そして頂いたハーブも、まだ自分のとるべき行動が分からないからまだ使わないでいよう。魔術は自分にブーストをかけるモーターみたいなものであって道標になってくれるわけではないから。
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