新しい太陽

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新しい太陽

冬休みが始まる。仏教コースであるクラスの連中は二分される。 家が寺で除夜の鐘つきに参加する奴らは来る寒さに備え、己の防寒テクでマウントを取り合っている。そうじゃない家の奴らは高二の冬だから遊ぶと言って正月早々カラオケに行く約束などをしている。俺だけはどちらにも属さない。初詣の準備をやらされている。 俺達のバイト先(金はもらっていないので正確には課外活動といったものか)もクリスマスを最後に休暇に入る。魔女には年八回の行事があり、この時期はユール(冬至)が控えている。クリスマスのもとになったと言われるユール祭では太陽の復活を祝い、それを想起させる柑橘類で祭壇を飾りスパイスを奉納する。そういった飾り付けを一角だけでもさせてもらうには、先方にはお伺いを立てておくのが礼儀というのは吉方には千度言われている。 校内のカフェでななえと待ち合わせをして帰る予定だった。他愛のない話をしたりもう見飽きた外の景色を見たりしてそろそろ帰ろうとしていた時だった。吉方なんか比べものにならん位うるさい奴に絡まれた。 「薫センパーイ 元気ぃ?」 「たった今元気じゃなくなったわ。」 中等部のくせに悪びれもせず高等部棟に土足で上がり込んでくる彼は観月みかるという。うちの神社と縁のある能楽師の一家でこいつが生まれた頃から知っている。要するに近所のクソガキ。土足で上がり込んでくるのは高等部棟だけでなく他人の事情にも。 「ヒメミコ先生の占い屋さん、もうすぐ契約切れるんでしょ。どーすんの?これから。」 「元々三ヶ月契約やったから二月二十日で終わる。なんでオマエが知ってるん」 「喜助さんから聞いた。そんでこれからはまた先生の家で農家する感じ?」 魔女志望でもないくせになぜこいつ、やたらこちらの事を気にするのか。 「今は新しい物件を探しているところです。」 待ちくたびれたななえが口を開いた。
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