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「おはよう、唐沢くん」
僕が『ま』の白文字から視線を持ち上げると、そこにはいつものように十字路の交点に立つ彼女。
後ろには真っ青な空が広がり、笑顔の彼女を引き立てていた。
「今日はいい天気だね」
その光景を見て、似てる、と思った。
やっとわかった。どうして僕はそれが直視できないか。
彼女の笑顔は、快晴に似ている。
透き通るように華やかで高い青空のようで、僕の目にはあまりに眩しすぎるんだ。
「ん、どうしたの」
「いやなんでもないよ」
訝し気な彼女に僕は小さく首を振る。言葉にしなくていい。この気持ちは神様にも気付かれたくなかった。
どんなに眩しくても、その明るさから目を離したくないなんて。
「おはよう、朝比奈さん」
誤魔化すように僕は言った。彼女はまた笑う。
そして僕たちはいつものように道の真ん中を並んで歩く。
明日の天気はどうだろう、なんて能天気に話しながら。
「晴れたらいいね」
そう笑った朝比奈さんは。
次の日、いつもの十字路に現れなかった。
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