11人が本棚に入れています
本棚に追加
……その思わぬ報告に私は、喉を微かにひくつかせ、ちいさく息をのんだ。それを認めると、刑事は数瞬の間を置き、またその低い声を、四角い空間に響きわたらせる。
「あいにく、あなたの両手両足の指紋は焼き焦げてしまっていて、身元判定の決め手には不十分です。……なので、あなたの負担を軽減するために、私はその3人に直接会い、あなたのことについて語って貰いました……その時の音声がこのレコーダーに入っています。それを聞いてはくれませんか。このメッセージから、あなたが少しでも身元を思いだして貰えるきっかけを得られれば、それにこしたことはございません。なお、思い込みによる誤判断を、防ぐため、名前などの固有名詞は伏せて語って貰っています……ではスイッチを入れます」
そう言うと、刑事は手元のレコーダーを操作する。すると、少しの雑音の混ざった音声が、病室にゆっくりと流れ出す。
……それから、私はベッドの上で身じろぎもできぬまま、ただひたすら、その3つのメッセージに耳を傾けた。
最初のコメントを投稿しよう!