内なるもの 外なるもの

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【メッセージ 3】 (年齢不詳の男による掠れ声)  私の愛しい、親愛なる、尊敬する、敬愛する、ご主人様。  お加減はいかがでいらっしゃいますか。ご主人様の、現在の痛ましい境遇を聞くに及び、従順な下僕でしかない私めは、なにもすることができませぬが、ただ、心を痛めて涙するのみでございます。  ですがご主人様、あなたは、暗闇の中にいた私めに、確かな愛を下さった。その慈愛に大きな恩を感じているからこそ、こうしてひと月の時が経とうとも、再び私めはご主人様のことを探し、求めて止まぬのです。  ご主人様と私の逢瀬は、出逢いから、すべて薄昏い空間のなかでありました。仄かな蝋燭の光のもと、私たちは何度も愛し合いましたね。ご主人様の愛は常に激情に満ちており、ときに私めには重く、また、限りない辱めをも強要するものでした。ですが、そのご主人様の私めに向ける荒々しい愛情は、他にかけがえのないものであり、また、ご主人様にとってもそうであったと、私めはいまでも信じて止まないのです。  どうかご主人様、哀れな下僕のことを思いだして下さいませ。そうしてくだされば、私めは、これまで以上の惜しみない愛をあなたに捧げるでしょう。  そして、永遠に、ご主人様の愛の生贄になる覚悟でおります。
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