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「以上です。なにか、心当たりのあるメッセージは、ございましたか?」
……暫くの後、私は静かに僅かに動く首を横に振る。わからない、との意志を告げるために。
……わからない、というか、あまりにもその各メッセージに現された人物像がばらばらすぎて、私は戸惑わずにいられなかったのだ。そもそも、このなかに私に当てはまる人間はいるのだろうか。それとも、本当に、私はこの3人が求める人物の、どれかであるのだろうか。
やがて、私のそんな困惑を見透かしたように、刑事が口を開いた。
「……そうでしょう。これだけではあまりに曖昧すぎて、ご自身にも分かりかねることでしょう。今日のところは、これまでにしましょう、身体に障るといけませんから」
そう言うと、刑事は病室を去ろうと、私に一礼すると、ドアの方向に踵を返す。だが、彼はその身を廊下に滑り出させる寸前で歩を止め、思い出したように私に向き直った。
「そうだ、あなたの唯一の所持品……なにかの鍵は、いま、鑑識が何の鍵であるかを鑑定中です。これも火災による高温で溶けていて、鑑定は困難を極めていますが。そちらのほうで、なにか成果があがったら、また改めて伺います」
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