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「先輩! これ、なんて読むか分かんないんですけど!」
「先輩! この資料ってどこに置けばいいんでしたっけ?」
「先輩! コーヒーは砂糖入れる派っすか? それとも入れない派っすか?」
石山はとにかく仕事に一生懸命な男だった。
時にはミスもするが、必ず周りの誰かが助けてくれる。皆、石山の人懐っこいオーラに影響されているのだろう。
にも関わらず、石山はなにかと冬村を頼ってきた。
「……何で、わざわざ俺に聞く? 他のやつに聞いたらいいじゃないか」
冬村は鬱陶しそうに石山を見上げる。石山は冬村よりも年下だったが、背は冬村よりも高かった。
喫煙者なのか、石山が近づいてくるたびに煙草のにおいが鼻をかすめた。かつて仕事のストレスから喫煙していた冬村にとっては、数々の苦い過去を思い起こさせるにおいだった。
「ダメっすよ! 俺の教育係は先輩なんっすから!」
それに、と石山は子犬のように瞳をキラキラと輝かせ、言った。
「俺、もっと冬村先輩と仲良くなりたいんで!」
「はぁ?」
なぜここまで石山が好意的なのか、冬村には理解できなかった。
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