お稲荷さんの好み

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 稲荷神社自体は凄かった。  何がって、雰囲気がそらもうすごい。1人で置いてかれたり、夜にうっかり来たら叫び出しそう。  どこもかしこも稲荷像だらけ。石畳みがしかれた歩道?には置かれていないけれど、それ以外にはびっしりと置かれているほど。  指人形くらいのサイズの小さなものから、狛犬くらいの大きなものまで。サイズから表情ひとつまで、かなりバリエーションは豊富だった。  正直、少し怖かった。  曇りだったからか、もう夕方近かったからか、木が生い茂っていたからか。境内はどこもかしこも薄暗かった。  個人的に、神社は社務所が空いているような時間帯(暗くなる前)までに参拝を終えるものだと思っている。昼間は神様の力で抑えられているけれど、夜は魔物の時間だというから。  とはいえ、異世界感が物凄くて、それはそれでテンション上がる!というのは間違いなかった。  怖いながらも、当然うきうきしてましたとも。怖いもの見たさ、というやつ。  けれど。もしうっかり歩道から逸れて、稲荷像を蹴飛ばしてしまったらと思うと、気が気ではなかったのも確かだった。そんなことになったら、お稲荷さんは絶対許してくれないだろうな、という謎の確信もあった。  そんな具合に、ドキドキしながらもやっぱり神社は好きだし、何よりこの異世界感は中々見られない。せっかくだし隅々まで見て回らなければ!と意気込んで回っていると、しばらくして上長の顔色がかなり悪いことに気が付いた。  最初は大丈夫だから、と言って私や他の人のあとを着いてきた上長だけど、本当に具合が悪いのかだんだん追いつくことすら難しくなって来る。  もう、最後の方は息も絶え絶え、意地で歩いている、というような感じだった。可哀想なので周りの人たちで支えてあげつつ、少し早めにバスに戻った。  バスに戻ると、例の男性社員はお土産かなんかのお菓子を食べながら上長を見て笑っていた。 「ほらね。相性悪い人はあまり好かれないタチなんだから、分かってたならやめた方がよかったのに」  そんなようなことを言いながら。  上長はバスに戻ってからすぐに体調は良くなった。なんでも、鳥居をくぐって出た辺りからマシになっていたらしい。  当たり前かもしれないけれど。カミサマにも、相性や好みがあるんだな〜と、思った話。  それから、やっぱりお稲荷さんはちょっと怖いけど、そこが好きだな〜!とも思った話。
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