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3.
抜けてしまった自分の羽根をクルクル回しながら、俺は天井向けて聞いた。少しだけ間が空いて、オークツリーが答える。
「さあ、なぜでしょうかね。他の植物たちより長生きだからかもしれませんね」
「どれくらい長いの」
「もう数え切れないほど、渡り鳥たちの移動も見ましたし、昔はもっと大きな鳥たちもいて、賑やかだった頃もあったんですが、彼らはいつの間にかいなくなりました」
大きな鳥、と聞いて俺はついどれくらい大きくてどれくらい賢いのか、気になった。
「俺より大きい?」
「そうですね。その鳥の前ではクロウは蝶【バタフライ】くらいの大きさでしょうかね。もっと小さいかな」
どんだけ大きい奴なんだ、と驚いた。そしてなんでそんな大きな動物がいなくなってしまったのかも不思議だ。そんな奴らがいなくなってもオークツリーはずっと生きているとしたら。
「オークツリーは、年寄りなんだな」
「クロウがお子様なんですよ、そんなに体が大きくなってもここにきて一人でいる。もう仲間達とも普通に暮らせてるでしょう? ほら仲良しのウッドペッカーとか梟【アウル】とか」
「ここが落ち着くんだ。オークツリーと一緒にいるのが大好きなんだ」
そう言うと、サワサワ、と枝が揺れて、葉っぱがひらひらとたくさん顔に落ちてきた。
「なんだよ、もー」
「あまり喜ばせないでくださいよ」
なんで喜ぶのかわからないけど、きっとここの中に入れるのは俺一人なのだろう。それもまた嬉しくてホワホワしてしまう。
「オークツリーのヒト型、また会ってみたい」
そう言ったのに、オークツリーはまるで聴こえなかったかのように、何も答えない。何か理由があるのだろうか。無理強いすることでもないし、また今度聞こうかな。
***
「クロウ。何だよ、昨日こなかったじゃないか」
翌日、餌をつついていると横からウッドペッカーが近づいてきた。彼もまた食事中なのだろう、くちばしの角から餌がまだ動いている。さあ森に帰ろうぜと言いながら一緒に羽ばたいた。森が近づき、枝に止まるとウッドペッカーもヒト型に変わる。橙色の髪に白黒の羽根。何より特徴的なのは喉元が橙色だ。俺と違って話をするのが好きなウッドペッカーは、森の中でみんなと仲が良い。そしてケーキを作るのがやたら上手くて、そのケーキも大人気だ。そんなウッドペッカーが何故俺に絡んでくるのかよくわからないが、もう随分前から一緒にいることが多くなった。
「昨日は腹がいっぱいだったからなぁ。また食わしてくれよ」
俺はこの賑やかなウッドペッカーが少しだけ苦手だ。背が小さくてニコニコしているのだけど何か底知れないやつのような気がして。
「うん、今度はヤマモモ使おうと思うんだ。クロウ、大好きでしょ」
ヤマモモ、と聞いて俺はうっ、と思わず喉を鳴らした。俺らの大好物じゃねえか。やっぱりこいつあざとい……
「おおい、クロウ! ウッドペッカー」
俺とウッドペッカーがそんな話をしていると、地上から俺らを呼ぶ声がして下を覗き込んだ。そこにいたのは狐【フォックス】だ。森の中にいるため彼もまた、すっかりヒト型だ。金色の短髪にすらりとした手足。そして大きな金色の尻尾を振っている。そして細い目はまるで糸のようだ。やれやれ、と俺とウッドペッカーは下に降りてフォックスに近づいた。
「どうした?」
「おお、この前ヤマネコからこれもらってさ。クロウが好きな奴じゃなかったっけ」
フォックスが手にしていた袋の中を覗くと、そこには大量のヤマモモが入っていた。
「わ、ちょうどいいね! 明日のケーキはこれで決まりだ」
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