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「・・・リアム」
「うん?」
「疲れたから少し寝る」
足を貸してくれと言うが早いかその場に横になると、驚くリアムの足を枕に毛布を肩まで引っ張り上げてしまう。
「ケイ・・・」
「勝手に俺が枕にしたと言え」
そうすればお前はわがままな友人に付き合わされている優しい人という評判がスタッフ達の間に尾ひれを付けて泳ぎ回ると、自嘲気味に笑った慶一朗の前髪をリアムの指がかき上げ、姿が見えたそこにそっとキスをする。
「気にしないで良いから少し休め」
「・・・カウントダウン、するんだろう?」
その為に今ここにいるんだろうと恋人の足を枕にしながらポツリと呟いた慶一朗の肩を大きな手が撫で、そうだなぁと暢気な声をリアムが上げるが、腕時計へと目をやった後、後5分だと少しだけ声を弾ませる。
「5分?」
「ああ。そうだ、ケイが気に入っているフィッシュマーケットのお店でエビを沢山買ってきた。食べ方は何が良い?」
ガーリックオイルでソテーするのも良いし、スイートチリソースでバーベキューみたいに焼いても良い、日本食の天ぷらのようには出来ないがと笑うリアムの手を無言で握り、爪を指の腹で撫でながら顔を寄せるその自宅で二人きりでないとほぼ見せることのない甘えるような仕草にリアムが呼吸を忘れそうになるが、なんとか平常心を保とうと唾を飲み込み、オーブンで焼くだけでも良いなと続けると、掠れた声がお前が食べたい食べ方でいいと、リアムの意思を優先するように囁く。
「エビと後は何を入れようか」
明日、貴方の仕事が午前中には終わるだろうからランチにそれを食べよう、そして二週間の休暇を利用して好きなことをしようと、慶一朗が握っていない方の手で柔らかな髪を撫でると、時計の文字盤が目に入って来る。
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