空色

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家に帰ると、ピアノの音色がした。1階の北側、グラウンドピアノがある部屋をあけると、えりかがいた。 写真に撮って額縁に入れてしまいたいほど、好きな光景だった。 「トロイメライだな。」 いつものようにえりかの横に椅子を置いた。鍵盤の上を、えりかの細い白い手はちょこちょこ動いて、食べてし...見とれていた。 狩猟本能がでてくるとこだった。 俺は頭をえりかの肩に乗せると、えりかがビクッとして手が止まった。 こんな反応もいちいち可愛い。 「今日、美術室にいたよね?」 「気がついてたんだ。」少し上ずった声。 「うん」 「あ、そうだ。手紙。空にって。」えりかがポケットから手紙を取り出し、差し出した。空にって、て。えりかの手紙以外いらないのに。 「....いらない。」 「受け取って、じゃないと私が嘘つきになっちゃう。」 「貰わなければいいのに」 「そういうわけにはいかないでしょ。」と、えりかの手が俺の手の中に入ってきた。さっきの狩猟本能がうずく。えりかの指を一本一本確認するように触れた。食べていいかな?
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