4人が本棚に入れています
本棚に追加
「ね、ね、空って、何が好きなの?」
隣に歩いている女子がやたら話しかけてくる。これに答える意味なんてあんのかな。でも一つしか思いつかなくて「...姉さん。」と答えた。
「空、お姉ちゃん好きなんだ。ウケる。」
俺には何がウケるのか、サッパリ分からなかった。
「めぐみちゃん、めぐみちゃん、俺にも聞いて!」朋也が間に入ってきた。朋也、意外と気が効くじゃねーか。ファインプレーだよ!俺は珍しく朋也を心ん中で褒めた。
「えー、私、空と話したかったのにー。」
「俺はめぐみちゃんと話したいんだよ。」
「え♡」
そのまま2人でどっか行ってくれねーかな。あ、サイフだけ置いといてな。
「空、今度、全国行くんだろ?」代わりに蓮が隣にやってきた。
「ああ」
「すげーよな。」
「先輩たち上手いよ。いつも刺激になるよ。」先輩たちの試合帯同して、最近ちょこちょこ試合にも出させてもらうようになった。
「蓮もセレクション受けたら良かったのに。」
「俺はいいよ。部活で十分楽しいし、上には上がいること早々に思い知らされたから。」
都大会まで出ると上手い奴らがいっぱいいた。蓮はきっとそのときにそう思っちゃったんだろうな。
「俺、蓮とやるサッカー好きだったんだけどな。」蓮はMFで俺がFWでいつも絶妙なパスを出してくれた。
「ああ、40とか50とかになったら考えてやる。」
「なにそれ、引退してんじゃん俺。」
「そういうことだよ。引退したら遊びのサッカーぐらいなら付き合ってやるよ。」
「そのときは、俺も呼んで。」やっちゃんも来て、ニッコリ笑って言った。
うん、なんだかそれはそれで楽しみだな。もう現役で出来ないと思ったら、こいつらとサッカーしよ。3人で話しながら向かっていたら、赤木精肉店が見えてきた。
「空ー!」さっきの、めぐみか、りなか、忘れたけど、後ろから名前を呼んでいた。俺は気にも止めず前を向いて歩いていたら、ピントが合うようにある後ろ姿が目に入った。その後ろ姿は振り返って目が合った。
えりかだった。
少し時間止まったように感じた。えりかがコロッケ屋なんて、珍しい。
ふっと横に目が行くと同じ中学の3年の先輩が座っていた。それを見た瞬間、体の中から色んな感情が込み上がってきた。
えりか、なんでそいつといんの?
最初のコメントを投稿しよう!