15人が本棚に入れています
本棚に追加
誘うな!
4限終了のチャイムが鳴って、先生がテキストを閉じたとたんに、教室はざわりと揺れる。
「学食行こうぜ」
「ハラ減ったー」
ガタガタと忙しなくイスが鳴り、バタバタとクラスメートたちが教室を出ていく。
机の横に下げておいたランチバッグを持ち上げると、手渡されたときの違和感がよみがえった。
やっぱり、妙に重い。
警報ランプが脳内でクルクル回る。
これを、どこで広げるべきか。
……教室はイヤだな、うん。フタで隠し食べは、かえって目立つから。
じゃあ、どうすればよいのか。
高2になっても、こんなしょーもない問題で、たびたび頭を悩まされている。
不自然になった挙動に、隣の席のキムラが大変よい笑顔で迫ってきた。
「おやおや、どうしたのかな?」
ナイススマイルだけれど、目が三日月型だ。
完全に面白がっているな、コイツめ。
「お困りのようだねぇ。ふたりっきりになれるイイトコロに、連れてってあげようか?」
好きな人から言われたらトキメクセリフも、キムラ相手じゃムカツクだけだ。
しかも、なんだか変質者っぽいぞ、キムラ。
「なによ、すごい不満顔するじゃん。ここで食べる?」
「イジメ反対」
「イジメてませんー。嘘つきは三文の得だぞ」
「それはただの詐欺師。早起きして」
「朝、苦手だもん」
「さすが遅刻の女王。……さっさと行こ」
一刻も早く教室を出たくて、キムラの袖を引っ張った。
「嫌がってたくせに」
「キムラから誘われたっていうのが、ちょっとね」
「イニチアチブを取りたいタイプ?いいわよん。どこに連れてくつもり?」
「……部室」
「結局あたしと同じじゃん!」
「嫌なら来なくていいよ」
「あら、冷たい。分かち合いましょうよ、友だちでしょ?」
「絶対、面白がってるだけじゃん」
「そりゃそうでしょー、友だちだものー。さ、行こうよ!」
キムラの誘い、イヤ、絶対!
最初のコメントを投稿しよう!