武者小路さんとお喋り

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武者小路さんとお喋り

 高校の入学式から10日ほどたった、春うららかな部活日和の昼下がり。  ここは、アタシが入学した高校の4階にある音楽準備室前。  アタシは夏子。友達からはナツと呼ばれている。  10日ほど前、高校生になったばかりの15歳で、吹奏楽部に入部届けを出したてのホヤホヤ。  中学から吹奏楽を始めたアタシは、高校でも吹奏楽部に入部することに決めたばかりなのだ。  中学生のとき、アタシは友達から、『顔だけ見れば超最高。でも頭の中は小学校』と言われていた。  要するに、アタシがバカだって言いたいのだ。でも、それって悪口じゃないんだよね。だってアタシは、人に喜んでもらえるバカになりたいんだから!  嗚呼(ああ)、バカなアタシってばカッコイイ!  さて、そんなアタシのおバカ願望は置いといて——  只今アタシは、音楽準備室前の廊下に突っ立っている。  準備室にある楽器を取り出したいのだが、鍵がかかっているため中に入れないのだ。  新入部員なもんで、こういう時どうしたらいいか、よくわかんないんだよね。  仕方ない、ここは鍵を持っている先輩が現れるのを待つことにしよう。  そんなわけで、アタシと同じ理由で廊下に(たたず)んでいた、同じ新入生の武者小路さんとおしゃべりしながら、アタシは待ち人が来るまでの時間を過ごすことにした。 「ねえ、中学の時、ずっとトランペット吹いてたんでしょ? いいなぁ」  アタシは武者小路さんに向けて話しかけた。
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