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僭越ながら
清風先輩とは、トランペットパートのパートリーダーをつとめる3年生。トランペットの演奏技術は、そりゃもう、『アンタ、プロですか?』と言いたくなるほどスゴイのだ。
それから美人でカッコいい。いつも周囲から『お姉様、素敵!』という声が聞こえてくるぐらいだ。
武者小路さんも清風先輩崇拝者の一人である。だからアタシが清風先輩に褒められると、この人ヤキモチ焼くんだよね。
仕方ない。ここは細やかな気配りが出来ると評判のこのアタシが、ひとつフォローでも入れてあげようじゃないか。
「でも、武者小路さんだって、清風先輩から『勘が良い』って褒められてるじゃない」
アタシがそう言うや否や、武者小路さんは——
——ガシッ!!!
興奮した様子でアタシの両肩をガシリとつかみ、そして——
「もう、嫌ですわナツさんったら! あなた、よくご存知ですのね! ええ、私、僭越ながら、清風先輩に、とてもよくお褒めいただいておりますの!」
「わ、わかったから、肩から手を離してよ。ち、ちょっと、痛いってば!」
「こ、これは申し訳ありません。私、トランペットの話になると、つい、我を忘れてしまうもので……」
それ、トランペットの話じゃなくて、清風先輩の話でしょ? この人、どんだけ清風先輩のこと、好きなんだか。
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