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黒いワード
「そうですわね。私、よく清風先輩から『直観型』だとお褒めいただいておりますの。ああ、でもこれは感性だけが売りのあなたが、なにも考えずにボーっとしながら思いつく『直感』ではなくて——」
武者小路さんは、会話の中でちょいちょいアタシに対して黒いワードを忍ばせてくる。まあいいや、それで?
「——合奏中に、他の楽器の音をよく聴いて、今どのように吹けば良いか『観察』し、瞬時に判断しているという意味での『直観』で…… って、ちょっと、ナツさん! 私の話、ちゃんと聞いてますか!?」
「……その話、長くなりそう?」
「…………ハァー。もういいですわ」
何か大切なことを諦めたような表情の武者小路さん。でも、武者小路さんって、しょっちゅう興奮してるんだよね。アタシは心配になり武者小路さんに声をかける。
「もう、武者小路さんってば、そんなに興奮したら鼻血出るよ?」
「…………私はあなたと違って、小学生ではありませんのでご心配なく」
「え? なに言ってんの? アタシ達、同級生だよ?」
「…………ハイハイ、そうでしたね。私達は同級生ですね。これでよろしいかしら?」
こんな感じで、アタシ達がとても楽しげな会話をしていたところ、向こうの方からこちらへと近づいてくる人影が見えた。おお! あれは今、アタシ達が噂している、清風先輩ではないか!
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