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終章 無垢な笑い声
愛犬シーズーのシーが、つぶらでくもりのないまなこを永遠に閉じたとき、すぐにオレもよごれきってにごったまなこを永遠に閉じるだろう。
そうして、奇跡によってともに寝ていた布団に鉄の車輪が設けられ、そのままその《銀河鉄道布団電車》に乗って、宇宙の果てまで永遠の旅へと出かけるだろう。
オレとシーを、照明のように明滅させている宇宙のちからに導かれて、すべてを照らす宇宙の照明、まことのひかりをもとめて……
ある11月の、紺碧色の南の夜空に、一等星よりもはっきりと明滅している不思議なものが飛んでいた。光のなかに車輪が見える。
その《銀河鉄道布団電車》には、ベージュの髪にTiffanyのサークルピアスをしたオトコと、かれの愛犬の白にゴールドの体毛の小犬が乗っていたが、やがてへその緒がついたままの女の赤ちゃんが乗ってきた。
へその緒が眩くひかり、ほんの小さな首にむごたらしいアザがある赤ちゃんは、激しく泣きつづけていた。
オトコが頷くと、小犬が赤ちゃんのまだ真っ赤な頬をやさしく舐めはじめた。すると赤ちゃんの泣き声がしだいに弱まり、終いには、陽光のような笑顔になって手足を動かしはじめ、へその緒のひかりも首のアザもきれいに消えた。
南の夜空に、星たちの煌めきに負けない、赤ちゃんのほんの小さな無垢な笑い声が生まれた。
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