第1章 ミニのフレアワンピースの裾が靡く一瞬の煌めきのように

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 WATASHI(ワタシ)の家庭も裕福ではあったが、整形手術の費用まで両親に頼るわけにもいかず、風俗で働いて鼻の整形をしようと考えた。  半年ほどして、ようやく貯まったお金で鼻の整形手術ができた。ウソのように生まれかわったWATASHI(ワタシ)は、すっきりと高く美しくなった鼻に自信を取り戻し、ブランド物を身に(まと)いホストクラブに通いはじめた。ホストからチヤホヤされるのがとても心地良かったが、またしてもお金が必要となりもはや風俗から抜けられなくなっていた。  予定日から1週間が過ぎても生理がこなかったため、妊娠検査薬でチェックしたところ陽性反応が出た。採光のためかライトグリーンでリーフ柄のカーテンがなぜか白っぽく眩しかった。思い当たるのは1ヶ月半ほど前、デリバリーヘルスで恰幅の良い客とセックスをした際、コンドームを装着しないまま射精されたことだ。その中年男性は、必ず外に射精するという約束をはじめから守るつもりがなかったのだ。  その夜もホストクラブの担当と会う約束をしていたため、迷いなくWATASHI(ワタシ)は、お気に入りの薄いピンクでミニのフレアワンピースを着て出かけた。  繁華街の(きら)びやかなネオンや明かりがWATASHI(ワタシ)の渇いた心身を満たし、そこはまるで生まれかわったWATASHI(ワタシ)の新たなステージのようだった。舞台の幕が開くのを渇望していたWATASHI(ワタシ)は、整形手術によって高く美しくなった鼻に、夜のとばりの風を感じながら煌びやかなステージを歩きつづけるのを望んだ。  ミニのフレアワンピースの裾が突風に(なび)く、一瞬の煌めきに永遠を求めるように……
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