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お腹が空いたため、午後の日差しが反射する大きな窓を備えた通路を進み、迷わずオシャレなカフェに入った。
あまり目立ちたくなかったので、いちばん奥の席へ腰かけ、アップルパイとチョコレートのスムージーを注文した。すぐにCHANELのコンパクトミラーでメークのチェックをする。とくにアイメイクが、WATASHIの重要チェック項目。
滑走路や待機中の旅客機が見渡せる大きな窓から陽光が店内を豊潤に満たし、少し離れた席ではピンクオレンジにマッシュボブの若い母親が、乳児にミルクを与えていた。薄いピンクのベビー服を着ているから女の子だろう。とても愛らしかった。
アップルパイとチョコレートのスムージーがくるとInstagramにアップするため、スマートフォンで食べている様子をしっかり自撮りした。とても美味しく満足できた。
席から立ち上がる際、手さげの紙袋がやはり少し《オモタイ》と感じた。
今までになかったような感覚で、やはりすべてが眩しかった。
それからWATASHIは、予約していたホテルにチェックインし、部屋の窓から夕暮れを迎えた高層ビル群が、赤く色づきはじめる壮大な光景を羨望の眼差しで眺めた。何かを叫ぼうと思ったが何も言葉が出なかった。
そして、スマートフォンの地図アプリで付近の情報を検索し、高級マンションが並ぶ付近の公園が目的地として最適だと確認すると、真っ白なシーツのベットで少し仮眠をとった。
落日した大都会の喧騒から死界となっている公園だった。
夜の21時頃、外国風に整備された公園に入り、通りから死界となる花壇の奥にある樹木の付近に手で穴を掘った。なかなかうまく掘れずマニキュアも剥がれとても焦ったが、なんとかある程度の深さの穴ができると、絶えず少し《オモタイ》と感じていた手さげ紙袋のなかの、コンビニ袋に包んでいた少し《オモタイ》ものを震えながらやっと埋めた。
紺碧色の夜空には、星たちが煌めいていたが、WATASHIには、なぜ星が煌めいているのか理由がわからなかった。
わかったとしても今のWATASHIには、なんの役にも立たなかっただろう……
WATASHIは跪き、星明かりの届かないまっくらな木陰に埋められた、へその緒がついたままのWATASHIの赤ちゃんに向かって合掌した。
ほんとうはお腹を蹴る赤ちゃんが愛おしくて、名前も考えていたのだけれど……
──ほんとうにごめんなさい!
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