181人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
汚れアイ 21
21
俺は広いバルコニーに出た。
「さっむぅー!!」
後ろから彼がついてくる。
俺はクルッと振り返りニッコリ笑った。
「俺…さくら荘…嫌いじゃないんだ…。」
「天…」
「雨降ったら湿気で畳が一階に落ちそうだし…風がきつい日は流しの上の窓がガタガタ鳴りっぱなしだし…」
燕さんはゆっくり俺を抱きしめて、髪に口づけた。
「天馬…俺を泣かせたいのか?」
「え?」
「良い返事だけが欲しいんだ。おまえに関しては…特に歯止めが効きそうに無い。」
「選び放題のくせに…」
「俺は一途だぜ?」
「ハハ…嘘っぽい」
"絶対"なんてない事を知っている二人が…
お互いを汚い手で探り合う。
「首輪でもつけるか?」
栗色の髪の隙間から見える瞳を見上げる。
それから、一息吸って言葉を紡いだ。
「俺は…燕さんを…誰にも渡したくないと思ってる。…あんたが俺を裏切ろうとしたら、俺…あんたを殺しちゃうかも知れないよ?」
燕さんは驚いた顔をする。
こんな事言われたら、きっと不安だろ?怖いじゃん。だからきっと、笑い話をしながら俺を送り返すに決まってる。
だってそうしないと…
マジで怖い。
今この温かい手が、いつか俺以外を抱くなんて…
きっと本当に
……許せないから。
最初のコメントを投稿しよう!