本多と坂本の場合

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本多と坂本の場合

本多は、柔らかい。 声もしぐさも雰囲気も…。 春の暖かな日差しのような、 小春日和のテラスのような。 とにかく優しくて柔らかい。 あいつは女子にもそうやって接する。 特に好きな女には格段に、 やわらかくて、やさしくて甘い言葉で 溶かすように、思いをささやく。 でも、彼女はそんな本多の思いに気づいていない。 坂本は、力強い。 見た目も性格も…。 とにかく男らしくて力強い。 男でも女でも、 「俺についてこい」と背中に書いてある。 とにかくかっこいい。 あいつは好きな女の子にも、 強い視線とストレートな言葉で、 引き寄せるように思いをぶつける。 でも、彼女はそんな坂本の思いに気づいてない。 本多はいつも彼女の近くにいる。 坂本はいつも彼女のそばにいる。 俺たちには何の共通点もない。 取り立てて仲がいいわけではない。 それぞれに友達がいて、 それぞれにテリトリーがある。 でも彼女を挟んで、 彼女を通して、 俺は本多のいいところを知っている。 俺は坂本の魅力に気づいている。
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