戸田中の場合

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再び彼女と待ち合わせたら、 俺より先に百瀬さんが来ていた。 何やってんだよ。 てか、なんで桃子との待ち合わせ知ってるの? 「百瀬さん」 近づいた俺に、百瀬さんが振り向く。 その陰から不安そうな桃子が見えた。 「あ、お疲れ」 「いや、お疲れじゃないっすよ」 「あぁ、俺コーヒー買いに来たらたまたま会ったんだ」 こくこくとうなづく桃子は、 少し目が潤んでいる。 「そうっすか、じゃ俺たち行くんで」 「えぇ、相変わらず冷たいねぇ」 桃子に近づいて、かばうように隠す。 「人の彼女に何してるんすか?」 「何もしてないよ、ね?」 コーヒー飲んでただけっとカップを見せる。 「それに、桃子ちゃんも退屈そうだったから」 そんなわけないじゃん。 桃子は、『待つ時間も楽しい』と思える女だから。 「ありがとうございます、でももう俺来たんで」 そう言うと、百瀬さんはいやな笑いを見せて、 桃子をなめるように見まわした。 「桃子ちゃんまたね」 そう言って百瀬さんは俺らから離れた。 「ごめんね」 「ううん」 そう言った桃子の顔は、 妙につやっぽく見えた。 「帰ろう」 「うん」 そう言って抱き寄せた桃子から、 何となく甘い匂いがした。 抱き寄せた腕から、 なんだか熱をおびているように感じた。 『抱きたくなる…』 急に百瀬さんの言葉を思い出す。 速足の俺に桃子の息が少し上がる。 「はぁ…はぁ」 俺の中の何かが急にはじける。 物陰に桃子を隠す。 「え?」 あっけにとられる桃子を壁ドンして、 欲望のままに口づける。 「はぁ…あ…こう…」 息継ぎに俺の名前を呼ぶ。 離した唇。 桃子を見つめる。 限界だ。 視界の隅にネオンをとらえる。 桃子の手を引いて、 足早に扉の中に入る。 無言のまま部屋まで桃子をひぱって、 そのままベットになぎ倒す。 「こうくん…!」 起き上がろうとする桃子に覆いかぶさり、 無理やりとも思えるほど乱暴に、 桃子を求めた。
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