駿河の場合

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駿河の場合

君が足先ではじいてしまった小瓶から、 床に散らばった琥珀糖を眺める。 西日にはじけて白いじゅうたんを虹色に染める。 きれいだ。 子供みたいにそう思う。 君がベットの中で肩を揺らしているのがわかる。 可愛くて愛おしい。 大好きで大好きで仕方ない。 ただ俺はその気持ちを上手に表現できないだけ。 自分でもわかっているけど…。 こらえながら鼻をすする君を背中に感じて、 体を起こしてベットに腰掛ける。 床に散らばる色とりどりのかけらたち。 お菓子と君の甘い匂い。 一つつまんで口に入れる。 口に広がる安心感を乱暴にかみ砕いて喉に流し込む。 これが俺の味わい方。 これが俺の愛し方。 壊すことしかできないけど、 それでも愛はあふれてやまない。 振り向いて君のほほに触れる。 びくっとなった君のあごにそっと手を添えて、 こちらを向かせる。 赤くなった瞼にそっとキスをする。 「愛してる」 そう言って唇にキスをして、 俺の口の中に残る甘い香りを流し込む。 「…んッ、ん」 無気力に俺を受け入れる君。 「大好きなんだ」 「…う、…うん」 小さな小さな声が君の唇からこぼれる。 わかってほしい。 琥珀糖が天井に作った宇宙を君も見つめている。 「きれい…」 そう言った君を今度は優しく抱きしめる。 「…私も…大好き」 君も俺の背中にそっと腕を回した。
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