友田の場合

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友田の場合

もう無理 元カレとの関係にそう思っていた彼女が 助けて欲しくてさしのべた手を たまたまにぎったのは俺だった 結婚して子供もいて 俺から見たら、あぁしあわせそうな人だなぁ と思っていた彼女は 本当は毎日1人で泣いていた 旦那の浮気だ  彼女が別れを決意したとき、旦那は 「彼女なんかいない、そんなこと思わせてたなら ごめん おまえだけだから」 といって別れてはくれなかった もちろん不倫相手とはそのあとも続いてた まっすぐで純粋でバカな彼女は 旦那と不倫相手が自分のせいで会えないのが嫌で、でも 子供たちに辛い思いをさせたくなくて 離婚と我慢の間でボロボロだった それに彼女はさみしがり屋で 1人になるのもこわかった 彼女にはその間、助けて欲しくて、六年間見つめ続けた男がいた 彼も彼女の気持ちに気づいていたけど、 慎重なその男は、けして自分から手をさしのべなかった。 そしてその日が来た もう無理だと思った彼女が、 俺を見つけた 幸せそうに笑っていた彼女は 俺にたまに見せる悲しげな視線 それが気になって 人妻に声をかけてしまう でも後悔してない 俺はすぐに彼女を好きになって 彼女の手をしっかりと握ったから それを知った 彼女が六年間思い続けた男は 「なんで…」とつぶやいた 俺はいった 「彼女が手を伸ばした時がタイミングだったんだよ 這い上がってくるのを待つんじゃなくて 手をさしのべてあげなかったから…それが俺とおまえの違いだよ」 彼女がにぎったのは 十年以上一緒に暮らして、やり直しを望んだだんなでも 六年間助けて欲しくて思い続けた男でもなく ただその時 そこを通りかかった俺だった そして俺はその手をしっかりとにぎっもう離すことはない
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