私を待っていたのは

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 誰?! と悲鳴を上げそうになる私に、彼女たちは「静かに!」と人差指を立てた。 「よく、見てよ、里保! よーく、見て? 私たちを!!」  不法侵入者な彼女たちは、ほらほらと自分たちの顔を各々指を差す。  正直言ってしまえば、あまりに驚き過ぎて心臓は飛び出そうだ。手足はもう震えあがりすぎて逃げることもできないから、彼女たちの言いなりになるしかない。  ここで包丁でも出されたらオシマイだもの……。  なぜ、自分の名前を知っているのか、どうやってこの部屋に入ったのか、とか聞きたいことは全て飲み込んで。  彼女たちが言うように、よーくその顔を観察した。  向かって左の彼女は、膝の上に置いたバッグもブランドものだし、着ている服は、とっても高そうなものに見えた。  なのに、どうしてだろう、その顔は全然裕福そうな顔をしていない。  目の淵や唇の横には厚手のファンデーションでカバーしきれていない痣があり、夏だというのに長袖なのも気になる。  向かって右の女の人は、とても貧しそうな恰好をしていた。  サマーセーターは、毛玉ができていてパンツの膝は薄くなっているのかテカっていた。  やせ細り、疲れたような顔をして、苦労しているのだろう。髪の毛にも艶が無くてテーブルの上で組んだ手はあかぎれだらけ。  だけど、二人の顔立ちは、とってもよく似ている。  そう、本当によく似ているのだ、。 「わかってくれた? 私たちは未来のあなたなの、里保」  寂しそうに微笑む裕福そうな女。  ……、ああ、今日は疲れたもんね、私。  きっとこれは幻なのかもしれない、とギュッと目を閉じてリセットするように目を見開いた。 「まあ、信じられないのは無理ないでしょうけどね」  私がしていることを理解してバカな子、とでも言いたげな顔をした苦労してるだろう女は苦笑している。
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