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手術前夜
ベッドに横たわる幸助の手を両手で握り締め、
「明日は絶対に大丈夫だから」
自分の緊張を伝えないよう無理して微笑んで見せる。
「ママまた泣いてるの? 」
顔を横に向けて母親に目線を合わせる。
「大丈夫だよ。
ぼくごぱーせんとだから」
ベッド脇には数台の医療器具があり、そこから伸びる管が鼻や腕に刺さっている。
痛さや辛さを抑え、無知な優しさを見せる息子の手をギュッと力強く握り直し、
「そうだね、ママもごぱーせんとの奇跡を信じてる」
言葉とは裏腹に、家族が居なくなる恐怖に震え、涙がどんどん溢れてくる。
「ママ泣かないで。
僕死んじゃってもパパのところに行くんでしょ?
そしたら天使になって一緒にママのことちゃんと見てるから」
そう言って、幸助はスヤスヤと眠りについた。
「ダメだよ、明日はちゃんとママのところに帰ってきて」
手術に向かう息子の体力を奪わないよう、泣き声だけは押し殺した。
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