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※
さっきのコンビニは、店員が親切でいいなぁ。
老人がぼやく。
まるで子供のように嬉しそうな顔で買ったばかりのタバコを抱えている。
少しウキウキした老人の後ろから、ゆっくりと迫るのは、白のセダンだ。
比較的静かな音を立てながら、のろのろと老人に迫っていく。
見た感じが裕福そうに見える。
小綺麗な服装、そしてオシャレだ。
キレイに染まった白髪を恥じるでもなくどうどうとしている。
一直線だった道を、くるりと右に回った。その時――。
老人に近づく怪しげな人物がいる。
その人物は黒服で、顔には黒いマスク。全身が黒ずくしだ。
だんだんと近づいてくる足音。
ーー通行人の邪魔をしてはいけないと道の橋に、老人が避けたが、後ろから老人の口を塞ぐ。
「おい!乗せろ」
言葉足らずな指令が飛び、もう一人が老人を車に押し込む。
「お前の家まで連れていけ!」
彼は誘拐されたのだ。
見知らぬ白いセダンに乗せられて、老人の家まで連れていけと誘拐犯の彼らは言っている。
車に乗せられて、わずか1分程度で老人は車から下ろされる事になる。
「そこだ!そこが私の家だ」
老人が、そう言ったからだ。
※
見るからに敷居の高い風貌の大きな屋敷だ。
家は大きく玄関に入ると長い廊下が続いている。
ズンズンと室内に入ると、誘拐犯が言った。
「おい!この家にある金、全部を出せ!」
「わ...わかりました」
老人は素直に犯人の要求に従う。
しかし、ここにあるのは全てお札しかない。さきほどのコンビニのお嬢さんの言葉が、本当の事だとすると、もはやこの家にあるお金は、クズのようなものだろう。
こんなものでもいいのだろうか??
これでもかってほど、分厚くなっている札束を見て、犯人がいう。
「ーーなめてんのか?」
「違う!!この家にはお札しかないんだ!信じてくれ!!」
「何だと??」
強盗犯が睨み付けている。
といっても、目元しかわからない。
「おい!お前、可哀想に...これやるよ」
細身の強盗犯が軽いコインを一枚手渡した。
「1万円だ。使ってくれ!!」
おわり
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