はじめに  島根雲見町いじめ自殺事件について

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はじめに  島根雲見町いじめ自殺事件について

 今から十六年前の四月五日――。  島根県の中北部に位置する雲見町で、当時中学三年生の女子生徒が自宅の部屋のドアノブに紐をかけ、首を吊った状態で発見された。  里中佳代(さとなかかよ)、享年十四。  自室の机のひきだしには走り書きのメモが残されていた。 「もう、これ以上耐えられません。こんなことは二度と誰にもしないでください。麗華(れいか)ちゃん、私はあなたに裏切られたことが悔しい」  麗華ちゃん――とは同級生の木村麗華(きむられいか)のことで、他に冴島志帆(さえじましほ)蛍原愛梨(ほとはらあいり)の三人が里中佳代を仲間はずれにし、陰湿ないじめを繰り返していたことが、担任によるクラス全員への聴き取りによって明らかとなった。  もともと四人は仲が良く、学校が終わると一緒に木村麗華の家に寄っては、お喋りやゲームに興じる仲だったが、自死の三ヶ月ほど前から突然関係が悪化し、休み時間や下校時に言い争いをしている光景がたびたび目撃されていた。  彼女らの担任である垣内浩二(かきうちこうじ)は、麗華ら三人を呼び出して事情を聞いた。  木村麗華は、遺書に記された「あなたに裏切られた」という文言(もんごん)にはまったく身に覚えがないと涙ながらに訴えた。 「佳代がある日突然、こちらを避けるようになったんです。それで私も自然と無視するようになって……」
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