婚約破棄されました。

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婚約破棄されました。

 学園卒業を祝うパーティー、クーリー殿下のひと声で会場は静まった。 「今日をもって、公爵令嬢サリア・カトリーユとの婚約を破棄する」  たくさんの貴族がいる中で名前を呼ばれクーリー殿下に婚約破棄をされた。  転生者のわたしにはこうなるとわかっていた。わたしはこの乙女ゲームは遊んでいたから。  小さい頃にお父様に連れられて来た王城で、初めてクーリー王子の手が触れた瞬間に衝撃が走り、自分が悪役令嬢だとも知りました。 「そうですか…あの、クーリー殿下は本気ですか? 婚約破棄で良いのですね」 「ああっ、僕は本気だ。この女神ルルアと結婚をする」  ヒロインを女神だと、おかしなことを言ってらっしゃる。 「婚約破棄は承諾をいたしました。後の事はクーリー殿下に全てお任せいたしますので、国王陛下にもその様にお伝えしてください。では、ご機嫌様」  殿下に最後の挨拶と最後の会釈をした。  挨拶も終わり会場を後にしようとして、クーリー殿下は私を呼び止めた。 「ちょっと待てサリア嬢。お前はルルアに色々したであろう? その事はどうするつもりだ」 「そうよ、何もなかったかのように、終わらせたりしないわ」  ルルアさんも転生者だって事は見ていて分かっていた、彼女の行動は挙動不審で側から見ていても、おかしかったですものね。  こうやって面と向かって彼女と話すのも、今日を入れても数回くらい?   それはあなたもご存知のはずなのに、どうしてもわたしを貶めたいのかしら?  いくらヒロインだからといって、何を言っても許されることではなくて? 「ふぅ…(面倒ね)わたしは何もいたしてはおりませんわ…ねぇ、ルルアさん。あなた一人で色々とやっていたじゃない、最後に階段までご自分で落ちるだなんて、思いもしませんでしたけど」 「私がそんなことをするわけないじゃ無い、あなたが私を階段から突き落としたのよ!」 「あら、そうだったかしら? あの方の従者に助けられたでしょう?」  最初は可愛いかった自作自演。  自分でみんなの前に転んでみたり、教科書を破ったりと、わたしが横を通っただけで、殿下にくっ付き、急に泣き出すそれまでは本当に可愛いく思えておりましたわ。  わたしが反応を返さないのが気にくわないのか、階段をご自分で転げ落ちたときには「あなたは、ここまでやるの」と少し怖くなりました。  あの人と一緒に駆けつけた、あの人が呼んだ従者が即座にヒールをかけたお陰で、あなたは怪我もなく気絶だけで済んだのよ。 『大丈夫だ、彼女の怪我は治ったよ』  その彼の言葉にホッとしたことを、いまでも覚えていいます。 「そういえばルルアさん。あなたはちゃんと彼と従者にお礼を言いましたか?」 「言ったわよ! って…違う‼︎」  嘘ね…あの後のあなたは医務室で気が付くと泣き喚いていたわ。  あなたが階段から落ちたと話を聞き付けて心配で駆けつけた殿下に、わたしが付き落としたと散々泣き喚いて伝えていただけです。  違うと言っても聞かずに、助けていただいた彼や従者にあなたはお礼の一つも、言ってはおりませんわね。 「ルルアがそんな見え透いた嘘を、つくはずがないであろう!」 「そうよ、ちゃんと証拠もあるんだからね」  ルルアさんがそう叫ぶと、殿下とルルアの後ろに立っていた他の攻略者達が一斉に、待っていましたと前に出て来た。 「ルルア様は嘘などを申しておりません」  1番は宰相の息子、腹黒メガネ。 「僕の天使のルルは嘘は付かないよ」  2番は魔法使い…茶髪。ルルアを天使とか言ってる、いたい子。 「ルルアは嘘はつかねぇー」  3番は騎士見習いおかん属性の赤髪の一匹狼。 「ルルアちゃんは…うっ、嘘は付かないよ」  4番は幼馴染、病んでる青髪。  あーいやですわ。面倒な人達が出て来てしまった、今日はわたしの終わりの日で始まりの日でもあるのに、これでは長引いてしまう。  彼の方はどうかしら?  この学園に入学をした時から、殿下の婚約者であるわたしに求婚を申し込んできた、彼との婚約が殿下との婚約破棄後に決まる。  いま、この時。同時進行で書類などの手続きをわたしの両親や彼、彼の国の宰相様が国王陛下と話し合いをしながら行っておりますわ。  国王陛下は彼が出した条件を飲むでしょう。国の借金が無くなるのですもの。  此方はルルアさんや攻略対象の方がししゃり出て来たおかげで、話が長引いていますので、彼の方の手続きが早く終わりそうだわ。 「すみませんが…この話はいつまで続くのでしょうか?」 「本当にいつまで続くんだ?」 「えっ、きゃっ」  彼はいま音も立てずに近き、わたしを後ろから抱き寄せて髪にキスを落とした。 「ル、ルナール様」 「リア、国王陛下との話は滞りなく終わったよ」  金髪の髪に琥珀色の切れ長と目、頭にふさふさな耳、黒の軍服にふさふさな尻尾。  彼はわたしを抱きしめたまま殿下達を睨んだ。 「リアはお人好しだなぁ、こんな茶番にいつまで付き合ったんだ? 俺の国に帰って俺の父上や母上に早く合わせたい、夜はみんなで食事を取ろう」 「ええ、わたしもそうは思っているのですが…これがどうも上手く終わりませんの」 「そうか…リアは優しいな」  彼はわたしの頬にすり寄せると、もっとキツくわたしを抱きしめてきた。  他の者など気にせず2人だけの世界に酔いしれた。   「「きゃぁーーっ、やめて、離れてルナール」」  突如ルルアさんは会場に響き渡る悲鳴のような声をあげた。 「どうしたんだ、ルルア嬢?」  彼女には側にいる殿下の声が聞こえていないのか、押しのけて此方に来ようとしている。 「ちょっとあんた邪魔よ、どいて! ルナール…あなた様がそんな奴を抱きしめないで!」  殿下を邪魔者扱いするルルアさん。驚くクーリー殿下に、彼女の発言に怒りをあらわにする彼。 「失礼だな君はどこの誰だ? 俺のリアをそんな奴だと? 何があなた様だ!」 「どうしてルナール? 私だよ。私を見てなんとも思わないの?」 「何を言っているのか訳がわからぬ。俺はお前など見てもなんとも思わない!」 「え、そんなぁ…」 「リア、みんなが待っている帰ろう」 「はい、ルナール様」  わたしが下から覗けば彼の口元を緩み、目じりを下げた。  わたしだけの可愛い彼。  あなたがわたしに「リアを俺の婚約者にする」と言われて半信半疑だった。  だってあなたも攻略対象だと知っていたから、ヒロインと出会ったら離れて行くと思っていた。  それなのにあなたは自信満々で… 『俺と君は出会ってしまった。出会ったその日から、俺達の運命は決まったのだよ』  まだクーリー殿下の婚約者のわたしに言うのですもの驚いてしまったわ。 「リア、リア」  わたしの頬に擦り寄せてくる。  ふわふわなあなたの毛が気持ちいけど、人前でそれをするなんて恥ずかしい。  …それに 「もう、ルナール様は分かっているの? わたしはいま婚約破棄をされたのよ、そんなに嬉しそうに笑わないでください」  ルナール様は一瞬キョトンとした表情をして、そして優しく笑った。 「はははっ、婚約破棄ね。そのおかげで俺はお前の婚約者となれるんだ。三年待った。愛しいリアがやっと俺のものになるんだぞ…こんな嬉しい日に笑わずには入れるか」  幸せいっぱいに笑う彼を見てわたしも微笑んだ。 「もふもふの尻尾が可愛いわ…ねぇ、いつものように触ってもいいかしら?」 「おい、こんな所でそのような顔をするな!」  キュッと胸の中に抱きしめられた。 「ルナール様?」 「誰にも見せん。クーリー王子は小さい頃から一緒に過ごして来た可愛い、リアとの結婚が決まっているのにも関わらず、他に好きな奴が出来たからと、いとも簡単に婚約破棄をするなんて、俺には理解できぬ…でも感謝するぞ。そのおかげでリアを俺のものにできた」  彼はわたしの目を真っ直ぐに見て「俺は一人だけをただ愛する、他の者なと見ない」と言ってくれた、だからわたしは彼を信じると決めた。 「クーリー殿下、わたしも感謝をいたします。あなたが婚約破棄をしてくれたおかげで、わたしは心から愛する人と一緒になれるのですもの」 「リア帰ろう。帰ってすぐに婚約をして来年には結婚式を盛大に上げよう。それから俺の子供をたくさん産んでもらう。俺はお前だけしかいらない、お前だけを愛すると誓う」 「わたしも、あなただけを愛しますわ」 「ちょっと何ニ人だけの世界に行っちゃってんのよ! どうしてあなた様が悪役令嬢となんて、私は? 私はこのゲームのヒロインなのよ一番はわたしよ!」  ゲームと言いルルアが叫ぶ。  この子はハーレームルートを狙っていたのかしら、誰一人も欠けずにみんなに愛されなくちゃ嫌なのかしら? 「だから、あなた様が1番に愛するのはこの私よ!」 「そんなことあるか…げっ、お前は…思い出したぞ」 「思い出してくれた? ルナール本当?」 「ああ、思い出したくもないがな、お前は俺とリアに嫌がらせをしてきた女だな?」  そう言われてルルアさんは首を振る 「違う、あなたが中庭でお昼寝をしていた時に側にいたのは私よ? ルルアだよ」 「知らね。俺が覚えているのはリアの膝枕て寝ていたら、側で馬鹿でかい声を上げて、俺の昼寝を邪魔をした女だ」  お昼寝か懐かしいわね。  その頃は殿下とヒロインが一緒にいる所を見るだけで、悲しくて中庭の隅で泣いていた。  彼はいつの間にか現れてわたしの隣に座る。 『泣くなよ…お前が泣くと俺まで悲しい気持ちになる』 『どうしてルナール様まで泣くのですか? …もう、泣かないで』  もう耳は下に垂れてションボリ顔のルナール様。 『うう…俺が泣くのはリアのせいだ』 『ルナール様は泣かないで…わたしは泣いていませんから、泣き止んでください』  庭園で一人でいると側に来てくれた、いつもわたしが泣いていないか心配をして、どこにいてもわたしの側にいてくれた。  一年が経つ頃にわたしは、いつしかルナール様を待つ様になっていった。 『リア…膝枕をしてくれるか?』 『いいですわ、ルナール様の尻尾を触らせていただけるのでしたらね』 『うーん、リアには特別にな』 『では、ルナール様に特別ですわよ』  わたしはルナール様の尻尾をなでなでさせていただき、ルナール様はわたしの膝枕でお昼寝をしていた。  温かい日差しの元でニ人で過ごしたわ。 「もっと前よ、ルナールは私と出会っているはずよ」 「もっと前? 俺の記憶にはない。覚えているのはリアを庭園で待っていた時に、やたらと側に来ては、リアの悪口を言うお前だけだ!」  ルルアさんはいくらルナール様に押しても帰ってこない、この状況で遂に泣き出した。 「ルナール酷いよ。私はあなたを手に入れるためにフラグを頑張った、一番好きなあなたを手に入れるためにハーレームルートに入り、別に興味もない攻略者だって落としたのに!」 「ルルア嬢?」 「ルルア様?」 「ルル」 「ルルア」 「ルルアちゃん」  酷い子ね、とうとう言ってはいけないことを言ったわ。  これからあなたを大事にしてくれるはずの殿下にまで言ってしまうなんて… 「はぁ…そうやってお前は多くの人を傷つけてきたのか? はっきり言おう俺はお前のことは好かん。リアは優しくて俺のことを嫌がらなかった…学園で周りに避けられていた俺に初めて声をかけてくれたのはリアだけだ、その時お前は何をしていた?」 「それは…でもでも、この世界は私のためにあるのよ、あなたとくっつくのはヒロインの私だけなのよ」 「そんなことがあるか俺にはリアだけだ」  ルルアに見せつけるように強引に抱き寄せて濃厚なキスをしてきた。 「「いやぁぁ‼︎ ルナール」」  ルルアさんはそれを見せつけられて、その場に崩れ落ちた。しかし、ルルアさんの周りには誰も集まりはしなかった。 「んっ…ルナール様、わたしは初めてなのですよ」  それなのにみんなの前で強引にキスをするなんてニ人の時にしたかった。 「拗ねた顔のリアも可愛い…俺だって初めてだぞ。ふうっ、我慢できなくなった帰ったら覚悟しておけ」  ルナール様はペロッと唇を舐めた。   「もう…ルナール様ったら…」 「なんだよ。今日からずっと一緒にいれる。お前を抱きしめて眠りたい…リアも温かい俺は好きだろう」 「ええ、好きですわよ」 ♢  温かい俺は好きだろうと、ルナール様は前にも言ったわね。  あれは一年生の頃に開催された王子の誕生日会。  クーリー殿下とルルアが離れずダンスを踊った夜、その頃はまだ殿下のことが好きで、苦しくてわたしはその場で涙を我慢していた。 『…ルア、帰ろう』 『え、ルナール様!』  わたしの手を掴み、その場からバルコニーに私を連れ去ると彼は、わたしを優しくお姫様抱っこをした。  彼は魔法が使える従者を呼び、ご自分の滞在する部屋へとわたしごと転送された。 『…ここは王城からは遠い、いくらでも泣いていいんだぞ』 『…ルナール様』  彼の優しい言葉に我慢していた涙が溢れた、泣き出したわたしを何も言わずに、彼は抱きしめてくれた。  ご自分のジュストコールがわたしのお化粧で汚れて、涙に濡れるのも気にせずに… 『…ありがとう、ルナール様』 『いいや、お礼より俺はこっちがいいなぁ』  わたしを抱きしめると一緒にベッドの上に寝転んだ。 『ルナール様…わたしは』  驚くわたしを胸に抱きしめて 『王子のことはリアのお父上に話をした、今日王子の誕生日会でリアが悲しむことがあれば、一晩リアと一緒に過ごすと伝えて了解を得た』 『ルナール様はお父様にクーリー殿下とわたしのことを話したの?』 『ああ、どうやら君のお父上も殿下とあの子との噂を耳にしていたらしく…悩んでおられたよ。それと、リアをよろしくとも言っていただいた』  ……お父様。  俺は何もしないからと優しくわたしを抱きしめて眠ってくれた。 ♢ 「どうした、リア?」 「ふふっ、あの夜を思い出していたの…」 「なんだ俺と同じ事を思っていたのか、ふっ、俺の胸にすがり付き眠るリアを見て離さないと決めたんだ」  わたしもです。  あなたの腕の温かい腕の中で目覚めて、わたしの中かで何かが変わった。 「行こう、リア」 「ええ、ルナール様」 「父上、母上も国でリアが来ることを待ってる。メルリ、出て来てもいいぞ」 「はい、はーい坊ちゃん」  ルナール様に呼ばれて出て来たのは、頭に白く長い耳をはやして燕尾服を着た、ルナール様の魔法が使える従者のメルリさん。  彼は手に杖を握り、会場の中をひょこひょこと歩き、楽しそうにわたし達の所にやって来た。 「では、王子、サリア様参りましょう」  杖で床をコツンと叩くとわたし達の周りに魔法陣が現れる。 「さあ、行くぞ。実はなリア…君のご両親は既に城へと呼び寄せてある」 「あらっ、用意周到ですね」 「当たり前だろう、愛するリアのご両親だ。俺にとっても大切な人達だからな」  彼の目元が優しく円を描いた。 「ありがとうございます、ルナール様」 「当たり前のことをしただけだ」  わたしは消える前に床で泣きじゃくるルルアさんと、後ろで呆然とするクーリー殿下に最後の挨拶を致した。 「クーリー殿下、ルルアさんと末長くお幸せになってください…ご機嫌よう」  泣きじゃくっていた、ルルアさんはキッと顔を上げた。 「「待ちなさいよ、サリア」」  しかし、  その声はわたし達の消えた後で、虚しく会場の中に響くだけだった。 ♢  わたしは彼のお父上が治める亜人種族の国エスタードの王城に移り、その国の第一王子ルナール・エスタード様の婚約者となった。 「リア大切にする」 「ルナール様わたしもあなたを大切にいたます」  彼に毎日愛される日々を送っていますわ。  もちろんわたしも彼を愛しています。    その後のクーリー殿下とルルアさんの事ですか?  ルナール様の従者に聞いた話だと  みんなさんは目が覚めたようで、次々とルルアさんの元から離れて行ったそうです。  彼女が何を言っても誰も見向きもしないとか、クーリー殿下は国王陛下がお決めになった、隣国の少し年上の姫を婚約者に迎えたそうですわ。  その姫に毎日尻に引かれているそうですよ。  他の攻略者の方達も家に連れ戻らされて、家の方が決めた女性の方を迎え、婚約や既に結婚をされた方もいるそうです。  ヒロインのルルアさんは誰にも相手にされなくなるどころか、殿下や他の方に訴えを起こされて、国の最も重労働の場所へと追いやられたそうですわよ。  毎日騎士に見張られて、逃げることもできず、泣きながら働いてるみたいです。  ではご機嫌よう。
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