視える

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❖ ❖ ❖ ❖  京琥珀(かなどめこはく)は高校一年を謳歌していた。  家はお寺であるが、琥珀には関係ないと思っている。父親も「別にウチの心配はしなくていい」と言ってくれていたので、後継ぎとか考えず、毎日を生きていた。彼氏というものにも憧れる。そんな普通の高校生だった。  何も知らない、その日までは。  夕食が終わり、父親がテレビを見ている横で、琥珀は食後の食器を洗っていた。男手一つで育てられたので、一人っ子の琥珀は父親と二人暮らしだった。 「世の中もいろいろと恐ろしいことだらけだな」  父親が呟いたことを、琥珀は見逃さない。 「なになにまた何かあったの?」  洗い物が終わり、手を拭きながら、琥珀も茶の間の座卓に座る。テレビは事故の映像を映し出していた。  その時に琥珀は何か違和感を感じて、咄嗟に口から飛び出す。 「あれ? 父、見て見て。この事故車の上に人が立ってるけど、何かパフォーマンス?」  その言葉で、父親はギョッとして琥珀を見る。琥珀はテレビを見ながら「ほらほら、ここよ」と指さしていた。 「琥珀……見えているのか?」  琥珀は「なにが?」と言いながら父親を見た。琥珀からしてみたら、テレビに映っている映像にしか過ぎないからである。父親はそれ以上は何も言わず黙ってしまった。琥珀からしたら何が理由なのか分からない。気にせずそのテレビを見ていた。  少しして、父親がテレビを消す。「えー観てたのに」と琥珀はブーイングの嵐だっだ。 「あのな、琥珀。この世の中には特殊な能力を持った『異能者』がいるって話したことあっただろう?」  父親は静かに語りだした。 「え、あー子供の時に聞いた気がする」  遠い記憶を手繰るように、琥珀は考えていた。  確か異能者がいることにして……琥珀は加持祈祷や呪術師のようなものと認識していたから、気にもしなかった。 「あのテレビで映っていた人……あれは『異能者』だ。それも普通は見えないように自分に術をかけている」 「なにそれ……」 「お前が見えたということは、能力が開花してしまったのだろう。そしてお前に『成人の儀』を行わなければならない」  琥珀にとっては全てが意味の分からないことである。『成人の儀』とか歴史でなんかやった程度の感覚でしかなかった。 「ちょっと、よくわかんないんだけど……ウチは寺だからそーいうよくわかんないことするとかそーいうやつなの?」  動揺気味に琥珀は声を荒げて聞いた。  今までは「寺のことは関わらなくていい」と言っていたことと……父親は真逆のことを言っている。府に落ちなかった。 「いや、やるって言っても形式的なことだ。今すぐではない」  父親の笑顔で琥珀は安堵した。  急に神妙な顔つきになっていたので、内心かなりビビっていたのだ。    その後珍しく父親は黙っていたが、琥珀は特に気にしないようにしていた。
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