552人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでは今ここで吉志様の遺言、化猫殿の許可も下りた故、開帳しようではないか」
〝吉志様の命により、呼び出したのは確かにこの化猫である。ある時は祀られ、ある時は畏怖の象徴、またある時は淘汰され消えていった魂の集合体。その存在は古からの伝承のみ。歴史の影で暗躍したとの言い伝えもある。幻のバケモノであった。雨辻家のみ、このバケモノを呼び出す呪印が伝えられておった。それを儂が克明に展開するのが与えられた密命。呼び出せるのか半信半疑だったが……現れたのはそう、その黒猫の姿をした靄だった〟
過去を呼び起こすかのように目を閉じ、記憶を言語化し諳んじる。
その言葉を高台から目を細め、葉月は何も言わず只々眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!