錦老師の回想、雨辻吉志との事

5/7
前へ
/1334ページ
次へ
 まさか、また再会できるとは思っていなかったのだ。  あの吉志でさえ、一人では呼び出すことが叶わなかったであろうバケモノである。  京穏香が化猫を呼び出したことについて、もちろんその後に錦老師が吉志に尋ねる事は叶わなかった。  当主にお目通りなど叶うことは無い。分かり切っていたのである。  その後、錦は吉志との約束をそのまま墓へ持って行こうと思っていた。  化猫の話は、もう表に出ることは無いと疑わなかった。  しかし、化猫を呼び出した京穏香。その子ども琥珀は運命の花嫁だった。  化猫は、その運命の花嫁の式として今、目の前に露呈した。  どう考えても、偶然の産物だとは思えない。  これも何かの縁だと、錦老師も下がることなく葉月に真相を求め喰らい付く。  しかし、葉月を見下ろしながら言葉無く只々老師を眺めた。
/1334ページ

最初のコメントを投稿しよう!

552人が本棚に入れています
本棚に追加