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葉月は、ふと顔を上げる。
「我は確かに雨辻吉志と『約束』を交わした。その縁が穏香を……そして琥珀へと導いた。全ては必然」
それだけ告げ、自身の足元に闇を展開させた。静かに闇の中へ堕ちていく。
「あ、葉月っ!! ちょっと待ってよっ! どういうことなの!?」
呼び止めようと琥珀が手を伸ばすが、その時は既に葉月の姿は見当たらない。堕ちていった穴すら消えてしまった後であった。
「やはり一筋縄では無理なようじゃな」
錦老師は分かり切っていたかのように、溜息を吐くと笑ってみせる。
最初から無理だと言わんばかりの、諦めを含んでいるようであった。
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