錦老師の回想、雨辻吉志との事

7/7
前へ
/1334ページ
次へ
 葉月は、ふと顔を上げる。 「我は確かに雨辻吉志と『約束』を交わした。その(えにし)が穏香を……そして琥珀へと導いた。全ては必然」  それだけ告げ、自身の足元に闇を展開させた。静かに闇の中へ堕ちていく。 「あ、葉月っ!! ちょっと待ってよっ! どういうことなの!?」  呼び止めようと琥珀が手を伸ばすが、その時は既に葉月の姿は見当たらない。堕ちていった穴すら消えてしまった後であった。 「やはり一筋縄では無理なようじゃな」  錦老師は分かり切っていたかのように、溜息を吐くと笑ってみせる。  最初から無理だと言わんばかりの、諦めを含んでいるようであった。
/1334ページ

最初のコメントを投稿しよう!

552人が本棚に入れています
本棚に追加