それを静かに聞く者

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 錦老師は勿論現状を知らない。  他の者は、何となく楓がマウントを取って神楽の怒りがマックスなのは理解できた。  ──……一触即発とはまさにこの事である。 《本当に……不愉快な人たちですね……》  普段の神楽の瞳は、日本人に多い深みのあるブラウンアイである。  それが少しずつブルーを含み始める。  何故かオッドアイのように、片方は深紅に染まり始めた。 「お前……今ここで決着つけるか?」  由良が触発されるかのように笑みを浮かべ、指先を噛み滴った血で神剣を呼び寄せる。  メンバー全員が申し合せたかのように、臨戦態勢に入り間合いを詰めていた。  神楽はその現状が気に入らない。 《こんな茶番今すぐ終わらせてやる》  既にその声は、神楽一人のものではなかった。
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