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その夜、私はいつものようにイヤホンをしてベッドに入った。
妙なことがあった一日を憂鬱な黒猫さんの声でリセットしたい。
それにしても、電車で出会ったあの人は変だった。
親切なようで、不審な感じで。
優しいようで、冷たい感じがして。
まるで憂鬱そうな黒い猫。
目を閉じていつもの音源を聴いていたら、電車の場面が瞼の裏に蘇ってきた。
そして私は不意に飛び起き、叫び出したい気持ちになった。
思い出したのだ。
あの時、私は確かにイヤホンをしていなかったことを。
でも、耳元で聴いていたのだ。
本物の憂鬱な黒猫の声を。
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