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私は昼休み成ると決まって屋上でご飯を食べる。
この場所はあまり知られていないのか、人目を気にする必要も無く静かに過ごせる。いわゆる穴場スポットと言うやつだ。
だがこの場所に居座っているのは、残念ながら私だけでは無い。
「やっぱり居た」
私が屋上のドアを開けると、快晴の空と共に、髪の毛で目が隠れてしまっている男の子が視界に入ってくる。
「君島さん」
こちらを見て、消えかかった小さい声で私の名前を呼んだ男の子は、直ぐに何事も無かった様に元の方に向き直る。
そんな彼の態度に私はため息をつくと、真っ直ぐ彼の方へと歩いていく。
「よ、山田」
彼の名前を呼んだ私が彼の横に腰を下ろすと、山田は距離を空けようと少し左にずれる。
「……ここで飯、食っていいか?」
私がパンの入ったビニール袋を見せてそう話しかけると、山田は無言のまま首を縦に振って鞄をあさり始める。
「ん、ありがと」
先に来ていた山田に許可をもらうと、私はパンの封を開けて口に運ぶ。
私がパンを食べていると、横に居る山田もカバンから弁当箱を取り出して蓋を開ける。
「……いただきます」
誰も見ていないというのに、小さな声で丁寧に挨拶をする山田に感心しつつ、私は彼の弁当の中身に目を移す。
そこには、栄養バランスもしっかりと考えられているのであろう、色とりどりの食材たちが綺麗に並べられていた。
「いつも思うけど、本当に愛のこもった弁当だよな。山田の弁当」
私はそう山田に話しかけるが、山田は返事をする事も無くお弁当を食べ始めてしまう。
「それ、山田の母さんが作ってるのか?」
山田が反応しない事に慣れている私は、彼に少し近づいて質問する。すると彼は、首を横に振って無音の返事をくれる。
「って事はまさか、山田が作ってるのか?」
山田は私の質問に、今度は首を縦に振って答える。
「すげーな。私なんて卵焼きもろくに作れねーのによ」
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