私を待っている人

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私を待っている人

「ただいまぁ」 家に帰ると電気がついていなかった。 あれっ? そう思いつつ、リビングの扉を開けると 暗闇の中、テーブルがぽつんとある。 みんな、もう寝ちゃったの? それともお出かけ? 「ただいまぁっ!」 ともう一回大きな声で言うけど 返事がない。 そんなぁ。 今日は大事な日なのに。。 みんな、わたしの誕生日忘れちゃったのー? わたしひとりぼっちで誕生日を迎えるの? なんだか、悲しくなってきた。  今日は散々な日だったから余計に悲しい。 朝、弟の隼人と喧嘩して落ち込んでボーッとしてたら 顔面にボールが勢いよくぶつかって鼻血出して倒れて めちゃくちゃ恥ずかしかった! それに花瓶の水を担任のズボンにこぼしちゃうし! そもそも、隼人と喧嘩したのがいけないのよ!! 隼人のやつ、あとで懲らしめてやるんだから!! 「ねーちゃん、帰ってきた!!」 ん?この声、隼人(はやと)? 「「「ハッピーバースデー!!夢華(ゆめか)               ねーちゃん!」」」 聞き慣れた声が重なって聞こえると同時に クラッカーの音が響いた。 そして暗闇の中から17歳という字がろうそくの光によって浮かび上がる。 ん?これ…ケーキ? よくみると、チョコプレートに        夢華、おめでとう! という文字が書かれていて、その下にはイチゴがケーキの周りを彩っているのが見える。 「夢華、火を消して?」 お母さんが優しく言う。 みんな、覚えていてくれたんだね。 今にも涙が溢れちゃいそう。 わたしは頷いてろうそくの火を消そうとした。 確か、韓国ではお願い事を唱えて火を消すんだよね。 「みんなといつまでも一緒にいられますように!」 わたしは願いを唱えろうそくに息を吹きかけた。 すると、部屋が明るくなる。 「ふふふ、韓国の風習ね。いつまでも一緒に、なんて照れちゃうわぁ。」 お母さんが抱きついてくる。 お父さんは涙をポロポロ流していた。 「夢華、成長したなぁ」 「もうっ、何これ。感動しちゃったよぉ」 泣きながら鼻をズビズビ鳴らしているとどこからか ティッシュが飛んできた。 見ると隼人の方からだった。 「ほれ。ティッシュ。きたねーなぁ」 「うるさいわね!!隼人のばかー!」 ムッとして言い返すとお母さんが仲裁に入ってくれる。 「まあまあ2人とも。隼人、謝りたいことがあるんでしょ?」 謝りたいこと? わたしが首を傾げていると隼人がモジモジしながら ラッピングされた小袋をわたしの目の前に掲げた。 「ねーちゃんの大事なヘアピン壊しちゃってごめん。 お詫びの印に、やるよ」 「えっ、なに急に!気持ち悪いんだけど」 そう言いつつ内心すごい嬉しい! めったに贈り物なんてしない(あいつ)が!? しかも、ごめんって! 「誕生日おめでと」 中身を見ると星形のヘアピンが入っていた。 すっごい可愛い!! 嬉しくて隼人に抱きつく。 「うわっ」 「隼人ありがとうっっ!わたしこそごめんね、 怒鳴ったりして…友達からのプレゼントだったからつい…。でも、こんなに可愛いヘアピン貰えてすごい 嬉しい!!」 隼人は「大事にしろよ」と笑った。 その様子を見てお父さんとお母さんが顔を見合わせ嬉しそうに笑ってる。 スマホがポロロンと鳴ってメッセージが画面に二つ 浮かぶ。 『誕生日おめでとう!これからもよろしくっ!!』 これは有紗(ありさ)から。 『夢ちゃん!ハッピーバースデー!大好きだよ〜』 これは梨花(りか)からだ。 「最低な1日が最高の1日になっちゃった」 にっこり笑う。 今、わたし最高の気分だよ!
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