〜隼人編〜 誕生日プレゼント

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〜隼人編〜 誕生日プレゼント

しまった。 どうしよう。 俺は手のひらの中を見つめる。 そこには、ハート形のパーツと本体が離れ離れになってしまったヘアピン。 ねーちゃんが大事にしてるヘアピンなのに! 頭を抱える。 どうしてこんなことになってしまったのか。 それは俺に初めての彼女が先日できたからだ。 彼女がもうすぐ誕生日だと言うから 俺はプレゼントを選ぶことにした。 しかし、俺は女物がよくわからない。 そこで寝ているねーちゃんをこっそり確認して 参考のため、ねーちゃんの部屋に入り アクセサリーを物色していたのだ。 このハートのヘアピンが彼女に似合うだろうなぁ とヘアピンをつけた彼女を想像していたら力が入り 見事に壊してしまった。 中学でバスケットボール部に所属しているせいか 俺は握力が強い。 やっちゃったよ。。。 ねーちゃんの激怒した姿が頭に浮かぶ。 背景が燃えている!業火だ!! ひぇーーっ。こえーよーっ。 俺は決意した。 このことは絶対ねーちゃんに言わない!と!! 俺は、小物入れにそっとヘアピンを入れ、何も無かったように自分の部屋に戻り、ベッドにダイブした。 いつかはバレるだろう。 しかし、俺はねーちゃんが怖い!! 情けない話だが、めっちゃ怖い!! だから、そのときまでは何も言わないっ! 俺はうん!と頷く。 その夜はなかなか眠れなかった。           □□□ 「隼人くん!お待たせ」 見るとチェックのワンピースを着た彼女がいた。 髪はショートカットで目が大きくて背が小さい。 服装も秋らしくていいな。 「…どうしたの?」 はっ、見惚れてしまっていたらしい。 「いや、なんでもないっ」 「変な隼人くん」  彼女…美雪はふふふと笑った。 ショッピングモールをまわりながら 雑談をしているとあっという間に12時になっていた。 「美雪、お昼にしないか?」 「そうだね、もう12時だしね」 俺と美雪はどこがいいか相談しながら歩く。 雰囲気の良いカフェを見つけ、ここはどうかと聞くと 美雪も気に入っていたらしく頷いた。 昼食を食べ終えると俺はさっき買ったプレゼントを 美雪に渡した。 「誕生日おめでと」 照れくさくてそっぽを向く。 「えっ、プレゼント?嬉しい!!これ、何?」 そう言いながら美雪は袋から中身を取り出す。 「わ〜っ可愛いヘアピンだね!!ありがとう」 美雪が嬉しそうに笑ってキュンとする。 「ちなみにねーちゃんのと色違いだから」 そう言うと美雪は「やったー!」と嬉しそう に笑った。 美雪には俺がねーちゃんのヘアピンを壊してしまったことは言ってある。 今日出かけることになったのも半分はねーちゃんのためだ。後で知ったのだがあのヘアピンはねーちゃんが中学生の頃友達からもらった誕生日プレゼントだったらしい。美雪に「謝りなさい!」と叱られたせいもあり、こうしてねーちゃんの(美雪のも)プレゼントを 買いに来たのだ。 「お姉さんと一緒だなんて嬉しい!」 「なんで、そんなに嬉しそうなんだ?」 不思議に思い聞くと美雪はニコッと笑った。 「だって大事な人の大事なお姉さんだよ?嬉しい に決まってるじゃん」 嬉しそうな美雪に俺も嬉しくなった。 ちゃんと謝ってこれを渡そう。 俺は手元の小袋を見つめ、微笑んだ。
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