怪しげなプレゼント

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「…イーチェン」 他の部屋は殺風景だというのに、そこは全く違っていた。 備え付けの黒い本棚には、種類別にたくさんの本が整理されていて、スタインウェイのグランドピアノと色を統一させたキングサイズのベッドには皺ひとつないブラックのシーツと、アクセントのためのグレーのフットスローが掛けられていた。 テーブルの上には、つい今しがたまでそこで書き物をしていたかのように、ノートと万年筆が置かれてある。この部屋をいつも使っていたのだろう。彼の匂いが一番強かった。 「ああ、イーチェン………会いたい……」 ふらりとベッドに潜り込むと、彼のいい匂いに酔いしれた。 「蒼………そんなにお前は」 「…ごめん、蒼。ボスを……行かせなきゃよかった。……引き止めれていれば、こんなことには。ごめん…ごめんよ」 誰かが、泣いているのが分かる。だが、それを気に掛けるまでの余裕など蒼にはなかった。
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