怪しげなプレゼント

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マテオの右腕には耳が折れた茶色い毛並みのスコティッシュフォールドが抱っこされていて、黄色い目玉に真っ黒な瞳を真ん丸にして目の前にいるよそ者を見つめていた。 「俺が、イーチェンのトラウマを治したって??」 「お前が、ベタベタ触るからいつの間にか治ったんだ……蒼、久しぶりだな」 「ああ、マテオ。会いたかったよ」 マテオは、片手を広げて猫と一緒にハグをしてくれた。相変わらずのムキムキのガタイ…力加減しらずの彼に苦しくなって背中をボンボンと叩く。 「ずいぶん痩せたみたいだな?大丈夫か?」 「そう?気のせいだよ。マテオこそ、家族は元気か?この猫はなんだ?」 「ああ、元気だ。猫?ああ、オレがいない間、エイミーの家で世話になっていたんだよ。なぁ~グリズリー」 「え?そうなのか。知らなかった」 マテオは、子供に呼びかける様に高い声で猫の名前を呼んだ。グリズリーという言葉に はたと思い出す。彼は確か、陸上で最強の猛獣(グリズリー)と戦ったのでは……。 「グリズリーと戦ったって」 「グリズリーちゃんに決まっているだろ~~~~なぁ、蒼お兄ちゃんに見せてやろうなぁ」 なんだか、甘々にあやす親バカのようで笑いが出て来た。この髭面の厳つい図体、最強な男がこんな喋り方、可愛いというよりドン引きだ。 マテオは、グリズリーを下ろすと指を銃に見立てて「 Bang!」と言った。猫は、ニャーと答えながら背中を床に擦りつけお腹を出している。 「そ、そういう……芸かよ……やばっ」 グリズリー確かに可愛すぎる。だが、デレデレ顔のマテオが面白過ぎて腹が痛い。笑いが止まらない。 「ヤバいだろう。これは芸ではない……餌で釣って覚えさせたわけではない。うちのグリズリーは天才なんだ」 「あ―――はいはい。そうですね~さすがだ~グリズリー偉いぞ~」 やばいの意味を違う風にとられても 彼が楽しそうなら問題なかった。 蒼の足元にまとわりつくグリズリーを撫でながら適当に返事をする。マテオも隣にしゃがみ優しい目で()を見つめていた。
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