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「ごめんな。蒼…………」
突然、態度を変えマテオは謝って来た。その意は、彼が説明しなくても分かるつもりだ。
「そんな昔の事、もう覚えてないよ」
「あれを話せば、もしかしたら彼から離れてくれる――そういう気持ちがあった……他人が話すべきではなかったとずっと後悔していた」
エバンス家の別荘で、子供だった奕辰の身に起こった悲劇の事だ。
言わなければ分からないのに、ずっと心に引っかかっていたのだろう。口は悪いが人想いの優しい男、奕辰がこの男を信頼していた気持ちがよく分かる。
「いいよ。そんな事を聞いても気持ちは変わらなかった。逆に大切にしたいと思ったよ……でも、マテオあんたはどうなんだ?」
うかがう様にグリズリーからマテオに視線を向けた。彼は、頬を赤らめデレデレした表情で蒼を見つめている。思っていた感じと何かが違う。傷心でないことは確かだ。
「実はオレ……彼氏が出来たんだ。アメリカ在住のスペイン人」
「えっ?え―――――!!!」
蒼の叫びに皆が話を止めた。
何か思ってやしないか、一番に奕辰を見る。目が合うと彼はやさしげに目尻を下げ頷いた。そしてすぐに、フィリップとジョンと話し始める。
何もなかったかのような飄々とした顔つき、自分に一途なオーラを半端なく出していて、胸の奥はあったかくなっていった。
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